一遍と今をあるく

哲学カフェ一遍

金相場

金相場

 

福岡市天神の銀行で3.8億円のキャッシュを引き出した男が即座に強盗にあった。同じ頃福岡空港から国外(香港)に出発しようとした韓国人の4人組が、8億円を所持していて関税法違反容疑で逮捕された。1億円の札束は約10キロあるそうだから、盗られた現金は約38キロ、空港で見つかった札束は約80キロにもなる。

 

金を盗まれた若い男は、東京の貴金属店に勤めていて、金の仕入れに使うつもりだったという。日経に載っている4/20の貴金属相場を見ると、銀<パラジウム<プラチナ<金 の順に高くて、金は4,504〜4,514円/gmで取り引きされている。

 

オイルショックとニクソン・ショックの時も、金価格が上がったが、5,000円には届かなかったように思う。(瞬間風速として1980年、6,495円になったことがある。森永卓郎「物価の文化史」による。)あの時は病理検査で使う金化合物の試薬の値段も上がった。試薬会社は原料の値上がりをすぐに末端価格に転嫁してくる。

あの時、貴金属なのに値上がりしなかったものがある。それは四酸化オスミウム(Os)だ。この小瓶の価格はグラム当たり1万円もした。電子顕微鏡の標本を染めるのに欠かせない試薬だ。

「金を買い占めるよりオスミウムを買い占める方が、よほど儲かるのではないか」と素人考えに思ったものだ。

 

さて被害に逢った男の金で金がどれだけ買えるか試算してみた。グラム価格を4,500円と仮定すると1キロが450万円だから、約85キログラム買えることになる。お札も重いが、こっちはもっと重い。東京までどうやって持ち帰るつもりだったのだろうか。

 

金価格はどうやら上昇中のようだ。ゼロ金利政策と経済の先行きへの不安から、リスク・ヘッジ(risk hedge=①損失回避, ②分散投資)として金の需要が高まっているのだろう。

 

田中貴金属のグラフと表をみると、「黒田日銀」の到達目標:年率2%のインフレ以上に、金価格インフレが進行している。

http://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/m-gold.php

 

1990年代初めにバブル経済が破裂し後、バブルに踊った闇の紳士たちの驚嘆すべき生活がいろんな本で明るみに出た(別冊宝島編集部・編「われらがバブルの日々」, 宝島社文庫)。 今回の事件も、裏で金地金に群がる紳士たちがいるような気がする。

 

4/21夜のネットニュースを見ると、白昼の銀座で若い男が現金4000万円を強奪されたという。1990年代ケニアを訪問した時、ある総合商社のアフリカ支店長の社宅に招かれたことがあった。その時の話に、「ナイロビの市内で日本人が手にカメラをぶら下げて歩いていると、後からバイクで来て腕ごと切り落としてカメラを奪って行く」、と注意を喚起されたことがある。

 

何のことはない。30年くらいたつと、東京もアフリカ並みになったな。