一遍と今をあるく

哲学カフェ一遍

「帝国の慰安婦」の判決

ソウル市東地裁はソウル・世宗大学朴裕河教授が刊行した「帝国の慰安婦」(朝日新聞出版社、2014/11)が元慰安婦の名誉毀損にあたるという原告側(元慰安婦)の提訴に対して1/25無罪判決を下した。これを大きく報道したのは日本では「産経」「読売」で、「朝日」「毎日」は小さくしか報じなかった。「朝日」は慰安婦報道問題で本心からの謝罪をしていないだけに、(有罪を予期した)自社刊行の本が無罪になったので弱ったのだろう。「中国」「日経」は記事にしなかった。イデオロギーで目が曇った新聞にも困ったものだ。

朝鮮の新聞では「朝鮮日報」が大きく報じたが、左派の「ハンギョレ」などは慰安婦の抗議を主体に報じた。

 

「買いたい新書」書評No.335「帝国の慰安婦」(朝日新聞出版、2014/11)の書評で、

<進行中の裁判の判決は予測できないが, 無罪ならこの本で「従軍慰安婦20万人の強制連行」の神話が崩壊し, 慰安婦は本質的には「からゆきさん」と同じ売春婦だったという「歴史認識」が確定するだろ。有罪なら韓国は「言論の自由のない国」「情治国家」として恥の上塗りをすることだろう。1月25日の判決公判がどうなるか注目される。>と書いた。

 

妥当な判決が出たことは嬉しいが、問題は地裁判決だから、原告側や韓国の情緒的世論がこれを受け容れるかどうか不明な点にあると思う。事件は検察側が控訴したそうで、まだどう転ぶがわからない。

 

集団をまとめるためには「敵」が必要だというのは、国家もスポーツのチームと同じであり、そのことは私もある程度認める。しかしそのために「歴史をねつ造」して、慰安婦問題を外交の主軸にするのは愚の骨頂だと思う。慰安婦は月額300円もの給料をもらっていたのであり、「無償労働」の性奴隷ではない。各種資料が示すところによれば、慰安婦の給与は日本軍佐官級だった。

こんな外交をしていたら、李王朝末期と同じで、国家の存続が危うくなるだろう。

 

北朝鮮から韓国に亡命した駐英北朝鮮元公使が、「北朝鮮で民衆蜂起が起こり、金正恩体制は間もなく崩壊するだろう」と記者会見で述べたという。東ドイツや東欧のソ連支配体制が崩れた1980年代は、まだインターネットがなく、情報は主にFAXで伝えられた。今は北朝鮮でも密かに韓国のテレビが見られるという。かつては北朝鮮のラジオもテレビも、韓国の放送が視聴できないように工作したものしか出回っていなかったのだが、時代が変わったらしい。

情報伝達が自由になると、社会変動が必ず起きるものだ。