一遍と今をあるく

哲学カフェ一遍

医療記事を読む

★★松山市のジャーナリスト宮住冨士夫さんから「週刊・愛媛経済レポート」7/25号掲載記事のご送付を受けた。お礼申し上げます。(宇和島の近藤先生から同記事PDFの送付があった。)

「廃棄の腎臓、透析患者へ活用ぜひ;塩崎厚労省、解禁すれば金字塔に」と題した「修復腎移植」の早期解禁を訴えた記事で、愛媛県選出の代議士塩崎恭久厚労大臣に宛てたメッセージとなっている。ぜひ多くの方にお読みいただきたく、ここに転載いたしました。

新聞記事 修復腎

★★★「医薬経済」8/1号(医薬経済社)のご恵送を受けた。お礼申し上げます。

目次を見れば、門外漢ながら「医薬業界」に大変動が起きつつあるのがわかる。

「処方箋の蛇口を閉めた大病院」という記事では、「医薬分業」の失敗が扱われている。

大手大学病院が次々と「院外処方」を止め、「院内処方」に復帰しているそうだ。理由は経済的なもの以外に、「門前薬局」の乱立により病院付近の景観がすっかり台無しになったことがあるそうだ。私も実際に「院外処方箋」を利用してみて、薬剤師のレベルがあまりにも低すぎるのを知り、「医薬分業はだめだ」と思った。

私が受診している神経内科の病院では、薬剤の種類、薬効を発揮するまでの所要時間、有効血中濃度の持続時間、類似の他薬との功罪などについて、スマホ片手に主治医がすぐに答えてくれる。院内処方なので、主治医が処方箋をまず薬局に渡した後、ちょっと雑談していれば、ほとんど待つことなく薬を受け取り、窓口で支払いを済ますことができる。予約して行くので、院内での所要時間は約1時間。こっちの方がよほど患者にとって利益があると思う。

 

「眺望 医薬街道」によると、2014年度の国民医療費は40.8兆円で、内訳は

後期高齢者(75歳>)=約15兆円(37%)

前期高齢者(65〜74歳)=7兆円(17%)

高齢者(老人)医療費が54%を占めているという。

1人あたりの年間医療費は、

後期高齢者=約92万円

前期高齢者=約56万円

だという。

なお、「終末期医療」になり胃瘻や人工呼吸器などをつけると、この費用は容易に500万円/月にも増大する。

「人口の高齢化」はまだまだ進行するので、国民医療費の増大とそれに占める高齢者医療費割合増加が避けられないこと、従って早晩「保険医療制度の破綻」が起こることは容易に予測できるだろう。

「鳥集徹の口に苦い話:我々は何のために医療記事を書いているのか」は、「週刊現代」の医療問題特集に対して「週刊文春」が5週連続で医療特集を組み、対抗する理由について述べている。それにしても「週刊文春」8/5号のように「五大がん攻略ガイド:乳がん・肝胆膵がん編」、「薬の安全な<飲み方><やめ方>教えます:認知症・頭痛編」のように同じ号に2本の記事を書くのは大変だろうと思う。

 

この間、毎週のように「週刊現代」と「週刊文春」を買いに行っている。情報には「読む人が少ないほど質が高く、多くなるほど質が落ちる」という原則があるからだ。週刊誌には新聞と比較にならないほど、高レベルの情報が載っている。

こういう記事は一過性の読物にしないで、「宝島社」あたりからMOOKにして出版してもらえるとありがたい。MOOKなら1冊1000円以下となり、週刊誌5冊買うよりはるかに安い。

「週刊現代版MOOK」と「週刊文春版MOOK」を同時に売り出し、どちらがよく売れるか、競争したらよかろうと思う。

富山の薬売り昔は各家庭に「家庭の医学」というような参考書が必ずあり、「富山の置き薬」や「救急キット」もあった。これらが消滅したのは、1960年代に「国民皆保険」制度が整備され、誰でも安く医者にかかれるようになったからだ。

 

この町に住んで20年、この間の高齢化と過疎の進行ぶりを見ると、今や独居老人は医者通いするのも困難になってきている。これに対応するには、もう一度「家庭の医学」、救急セット、「置き薬」を復活させ、たいていの傷や病気に「自己対処」する知恵を復活するのがよいのではないか、と考えている。諸氏はいかがお考えであろうか?

 

鍛冶孝雄「読む医療:人間を見る人が医師になり作家になった」は、

久坂部羊「ブラック・ジャックは遠かった」(新潮文庫)を取り上げている。久坂部というと、

医療記事久坂部羊「日本人の死に時:そんなに長生きしたいですか」(幻冬社新書, 2007/1)

久坂部羊「大学病院のウラは墓場:医学部が患者を殺す」(幻冬社新書, 2006/11)

のような、かなり過激な医療批判本しか読んだことがない。

鍛冶氏の書評を読むまで、阪大教授で再生医療の研究者、仲野徹氏(「エピジェネティクス:新しい生命像をえがく」,岩波新書,2014/5)と阪大で同期だったと知らなかった。

北杜夫「どくとるマンボウ青春記」「どくとるマンボウ医局記」に類似した青春回顧録だとの指摘があり、ぜひ読んでみたいと思った。

3.【週刊誌「医療批判記事」】

「週刊現代」8/20・27号医療批判特集(26ページ)がよく売れているらしい。8/11(木)に書店に寄ったら「バックナンバーがほしい」という客が多いという話を店長から聞いた。

 

「コンビニ人間」が載っている「文藝春秋」9月号も買ってきた。これは「コンビニ」というシステムに一体化した独身女店員が、人間からロボットに変身するという話で、カレル・チャペック の名作SF「ロボット(R.U.R.)」(岩波文庫, 1989/4)では機械人間のロボットが科学者が発明した「プロトプラスマ」を利用して本物の人間になるというストーリだが、その逆になっていると思った。

この手の二流小説は、私は出だしの1パラグラフと最後の1ページを読んだら終えることにしている。もともと芥川賞と直木賞は雑誌が売れない「にっぱち(2月と8月)」に「文藝春秋」の売れ行きを増やすために菊池寛が考案した。だから昔は2月号と8月号を買えば、両賞の受賞作が読めたのだが、いつのまにか芥川賞受賞作だけは単行本として先行販売するようになった。で、いつか70歳で芥川賞を受賞した、黒田というかいう女性作家の本を買ってきた。面白くないので、すぐに投げ棄てたことがある。金の無駄だから、以後本は買わず、雑誌で読むことにしている。

 

「週刊現代」の手前味噌もあるかもしれないが、同誌記事を医者に示して、反論を求めたところ主治医が説得力ある根拠を示せないで、投薬を中止したり、治療法を変更した例もあるという。私も同誌が掲げる内服薬や手術のリストを見て、「いまだにこんなことがおこなわれているのか?」と驚いた。

患者の医療に対する基礎知識をメディアに対する基礎知識(メディア・リテラシー)にならって「メディカル・リテラシー(ML)」と呼ぼう。日本はこのMLが非常に低くて、「医師におまかせ」の医療を生み、国家予算100兆円のうち、40兆円を医療費が占め、さらに10兆円を介護・障害者・生保医療などの「社会福祉費」が占めるといういびつな構造になっている。

夕張や松前型の財政破綻に陥りたくなければ、国民のメディカル・リテラシーをスウェーデン並みにたかめ、コンビニ受診をやめさせ、「かかりつけ医」によるトータルな生活の質管理を普及させる必要があろう。

その点で「週刊現代」の9週連続の特集は、国民の健康意識を喚起する上で大いに貢献したと私は思う。当初述べたように、記事を「宝島MOOK」1冊にまとめ、ぜひ再販売してほしい。

 

対する「週刊文春」だが、8/25(木)号は広島では未発売なので、入手してから最終的意見を述べたいが、包括的な印象を述べると、最初に「週刊現代の報道は悪だ」と決めつけた鳥集徹氏のスタンスは間違いだったと思う。「善か悪か」の判断を読者ができるようなレベルの記事を書くのがジャーナリスト使命であり、自分の一方的意見を押しつけてはいけない。