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修復腎移植訴訟の「高松高裁判決」報告

image1日本移植学会の役職にあった被告らに対して、その言動によって、平成19年7月12日に「『臓器移植に関する法律』の運用に関する指針」(「ガイドライン」)が改正された結果、修復腎移植を受ける権利が侵害された、という理由で、透析患者や腎臓の移植者(レシピエント)が被告らに、不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき、慰謝料等の支払いを求めた「損害賠償請求事件」の高松高裁判決が、平成28年1月28日にあった。
判決は一審の松山地裁判決を支持し、「原告の控訴を破棄する」であった。
この日、午後2時から高裁の隣の「弁護士会館」で開かれた原告らの記者会見に出席した。
この会見の最後に、広島大学医学部名誉教授で病理学者の難波紘二氏は、以下のように総括した。その要旨を記す。
2006年11月に<病気腎移植>の存在が報じられて以来、移植学会と国内メディアのあまりにもひどいバッシングを見て、世界の移植学会を味方にすることにより日本の移植医療を改革していくことにした。
海外の移植医からの支援もありました。フロリダ大のハワード教授、UC-SFのアッシャー教授、ハーバード大のデルモニコ教授(元世界移植学会会長)、ドイツ・ハイデルベルグ大のオペルツ教授(元世界移植学会会長)など、実状を知る人たちはみな支援してくれています。
2008年のフロリダでの万波論文の受賞を初め、修復腎移植論文は国際学会でいくつもの賞を得てきました。オーストラリアを初め、世界各国で修復腎移植が取り入れられるようになりました。ドイツは改正移植法で真っ先に「小径腎がんの移植」を認めました。
それに続いてEUやWHOも移植ガイドラインで、小径腎がんの移植を認めました。
さらに昨年12月、アメリカのUNOS(全米臓器移植ネットワーク)は「治療目的での臓器提供ドナーとそのレシピエント」について、これまで個別病院で実施して全体像が把握できていないのに鑑み、「登録制による経過観察」を実施することを理事会で決定しました。あげられている臓器のトップは、「腎細胞がん」になっています。
UNOS新方針のインパクトは大きいと思います。日本では、修復腎移植が認可されると年間2000例の腎ドナーが出現すると推計されていますが、腎細胞がんの発生率は白人に多く、人口比を考えると、アメリカでは年間に6000〜7000個の腎臓が新たに利用可能となると思われるからです。
このように「修復腎移植」はもう世界を味方に付けたのです。世界は変わりました。日本だけが取り残されているのです。その日本でも、ネットの世界では「糖質制限食」の唱道者、京都大の江部康二先生のように、ブログで「修復腎移植」支持を表明する著名人が増えています。
日本の今の状況を変えるには、学会や行政の力だけでは無理で、「第三の移植」としての「修復腎移植」を解禁し、沢山の「歩く広告塔」(修復腎のドナーとレシピエント)を生みだし、彼らの口コミにより、草の根レベルから「移植医療の良さ」を語ってもらうしかないでしょう。
「修復腎移植」を広める活動はもう世界を獲得しました。米UNOSがこれを新方針に盛り込んだことは、必ずや大きな力となって日本に押しかけるでしょう。日本の学会も厚労省も、いつまでも「鎖国」を続けるわけにいかないのは眼に見えています。残念ながら高裁での裁判には敗れましたが、先進医療だけでなく一般医療としての解禁を求めて、希望をもって修復腎移植推進の活動を続けようではありませんか。
鎖国政策を続ける幕府を批判し、蛮社の獄につながれ、田原藩で蟄居中に自刃した渡辺崋山。また脱獄後、英明な藩主伊達宗城に招かれ宇和島に潜伏し、江戸にもどって役人に撲殺された高野長英。今日にあっても、新しい時代を拓く英知(修復腎移植医療)がいまだ封殺されている状況がある。歴史の教訓に学び、悲劇を断ち切るためにも修復腎移植の一刻も早い解禁を望む。(青山)