一遍と今をあるく

哲学カフェ一遍

廃用性萎縮

廃用性萎縮という医学用語がある。平たくいうと使わない機能は必ず衰えるという意味だ。相撲取りが現役時代にはでっぷり太っているが、引退して親方か何かになると、普通に背広を着ていてもおかしくないほどやせてくる。あれも一種の廃用性萎縮だ。

筋肉や脳や骨など使わないでいるとやせ衰える、呆けは始まるし、骨はもろくなってしまうものだ。長期入院した老人には、大腿骨の股関節内で骨折が起こりやすい。

フランスの動物学者レマルクは「用不用説」を唱えた。キリンの首が長いのは、樹の上の方の葉を食べるからだと考え、これを進化の原動力と考えた。

もっともらしい説だが、個体が後天的に獲得した性質は次の世代には遺伝しない。これは遺伝学の常識で、卵子か精子に突然変異が起こらないと進化は起こらない。

 

動かないで飲み食いをたっぷりしていて、例外的に増えるのが、体脂肪である。メタボの男性や女性を最近列車内で見かけるようになった。中にはそれが売りのテレビタレントもいる。

1970年代にワシントンDCのポトマック川につながった池で魚釣りをしたら、黒人が多くて驚いた。何が釣れるのか聞いたら「ナマズだ」という。どうやって調理するのか聞いたら「ディープ・フライにする」と答えてくれた。日本語の「から揚げ」に相当する。あれだと骨まで食えるからムダがないが、安い食用油の取りすぎだ。道理でワシントンの黒人には男も女もデブが多いわけだ、と納得できた。