一遍と今をあるく

哲学カフェ一遍

東京の不動産協会で研究発表

青野勝広先生が、今年の9月中旬、東京の不動産協会で研究発表することになりました。以下に発表内容の概容を先生のレジュメから知らせします。

青野勝広著『不動産の税法と経済学 改訂増補』(清文社 平成23年)の第10章「不動産取得税・登録免許税と凍結効果」と‘Proposal for a Combination of the Inheritance Tax and a Realized Capital Gains Tax at the Time of Death’(都市住宅学93号 2016 SPRING)を中心にするつもりです。前者は、不動産取得税・登録免許税が土地取引を阻害する効果を持ち、特に、地価上昇期に比べて、地価下落や地価安定期には、土地取引を阻害する効果が極めて大きいことを簡単なモデルを使って明らかにしたうえで、①不動産取得税の廃止、差し当たりは、低い水準での凍結、②登録免許税を不動産の登録制度の維持に必要な程度に低い税額で定額課税することを提案しています。

後者の英文の論文は、日本の土地への相続税評価が他の金融資産と比べて低く、また、譲渡所得税は土地を売却した時にのみ課税されるから、土地売却を阻害する効果を持つ。特に、日本の相続税制度の下では、単純相続の場合は、被相続人、相続人が土地を売却しなければ、譲渡所得税を永久に免れる。このことが、土地売却を阻害して、土地開発を遅らせ、地価を上昇させていることを指摘しています。

その改革案として、2世代モデルというモデル分析を使って、「相続税と譲渡所得税の死亡時課税の組み合わせ」案が、土地開発を促進し、地価を下落させ、公共投資の財源確保にも役立つことを明らかにしています。「相続税と譲渡所得税の死亡時課税の組み合わせ」案というのは、被相続人が土地を売却した時に、譲渡所得税の課税を死亡時まで延期する代わりに、被相続人およびその配偶者が死亡した時には、被相続人が土地を売却していなくても、売却したと見做して譲渡所得税を課す(「みなし譲渡所得税」)、ただし、相続税と「みなし譲渡所得税」の同時課税による負担軽減のために、相続税から「みなし譲渡所得税」を控除するという案です。

「みなし譲渡所得税」は、現行の税法上も適用可能で、限定承認などの時には、「みなし譲渡所得税」が課せられます。「相続税と譲渡所得税の死亡時課税の組み合わせ」は、高齢者が広い土地・住宅を売って老後の生活資金にすることや商店街の空き家対策にも役立ちます。