- 絵本一遍さん
足助威男
1 聖
鎌倉時代の捨(すて)聖(ひじり)・一遍(いっぺん)さんはすばらしいお坊さんです。
旅衣木の根かやの根いづくにか身の捨てられぬところあるべき(身も心も山野に捨てた一所不住の私、木の根かた、かやの根かた、どこにでも身の捨てられないところはないはずです)
いろいろの意味で、一遍さんは真の日本の旅人でもあります。民衆の中にとび込んで、民衆と共に人生を考えて歩いた一遍さん。一遍さんは住む寺も、留まる庵(いおり)もありません。ただ「南無(なむ)阿弥陀仏(あみだぶつ)」を勧(すす)める、すさまじいさすらいの旅に明け暮れたのでした。
「破れ衣に、細い脛(すね)、こけた頬(ほほ)に、とがった顎(あご)、眉(まゆ)が長くて、目は静か、口には念仏、合わせた掌(て)の先から光がでているような」___これが日本各地をまわった一遍聖の姿なのです。