一遍と今をあるく

よもだ俳句と暮らしの点描

君の名は、ナズナ?

末年始の食べすぎ飲みすぎで、正月太りが気になる新年7日。疲れた胃を休めてあげる目的で、松山市居相町の伊予豆比古命神社(以下椿神社)で振る舞われる七草がゆを頂戴しに行った。

通称椿神社での七草がゆは、椿神社敬神婦人会が、参拝客の1年間の無病息災を願い約700食を手作りされるもので、15年以上続く恒例行事である。10時からの予定だったが、私が着いた9時半すぎには、境内に行列ができていた。

頂いた七草がゆには、黒豆やキンカンの甘露煮、塩昆布も添えられておりホカホカしたやわらかいお米に、胃が癒される思いがした。

そんな折、おかゆの中に入り乱れて浮かぶ緑草を見てふと思った。七草がゆの七草とは、春の七草のことで「セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロこれぞ七草」と子供のころ節をつけて覚えたものだ。おかげで名前は出てくるのだが、個別にどれがセリでどれがナズナかと問われると、実際どれもよく似ていて、皆目見当もつかない。

 

    七草がゆに並ぶ参拝客

古くから日本では、年の初めに雪の間から芽をだした草を摘む「若草摘み」という風習があったそうだ。自分の指で七草を一本一本確認し、摘んでいたのである。ところが今日の日本では、都市生活が浸透し、七草はスーパーでパック詰めされている。はたして春の七草の一つ一つを名指しできる日本人がどれだけいるだろう。今、私のすぐ前で「七草がゆ」を取材している20代とおぼしき女性記者は、かゆの中からホトケノザをすくい上げることができるのだろうか。

ネット社会に入り浸り、リアルと非リアルに距離がある現代日本の若者は、「七草」は検索し知ることはできても、現物を見て言い当てることがはたしてできるか疑わしい。そこで、若者中心にヒットしている映画にあやかって1句、

かくも似た七草に問ふ君の名は

 

 

      振る舞われた七草がゆ

スマホゲームもいいが、実体験として七草がゆの日に、春の七草を順に味わってみる。こういうリアル(現実)こそが大切なんだと、自戒も含めて思いながら口にする塩がゆは、何だかちょっぴりしょっぱかった。(笑)

(佑)