一遍と今をあるく

よもだ俳句と暮らしの点描

耳をすませば、はじまりの音

みなさんは、「コカリナ」という楽器の名を耳にしたことがあるだろうか。東欧ハンガリーの民族楽器として生まれ、日本で改良を重ね「コカリナ」と名付けられた木製の笛のことである。このコカリナ、手作りでどんな木からも作られ、その材質によって音色も様々である。小ぶりなものが多く持ち運びに便利で、音を出すのも簡単な為とくに小学生や年配の方に支持されているそうだ。2009年の福井での全国植樹祭の折、皇后さまも親しまれている楽器として世に広まった。

 

愛媛にも2年前に、日本コカリナ協会公認講師の平松夕佳(ゆか)さんに

      平松夕佳さん

よってサークルが立ち上げられた。この秋には内子座で全国大会が開かれるなど、愛媛でも今静かなブームが起き始めている。

 

このたび、このコカリナサークルの2周年記念の音楽会があるというので19日の日曜、砥部町の会場へ聴きに行ってきた。

この音楽会に出演されたのは、平松さんの門下生で、平松さんの演奏に魅せられ自らもコカリナを始められた方々である。演奏は、童謡、外国民謡、ドラマ主題歌と多岐にわたった。コカリナの音色を主役として、歌のソロあり、ギター伴奏ありと、あっというまに2時間が過ぎた。

 

なかでもフィナーレでコカリナの演奏をバックに、来場者一同で合唱した「ふるさと」が感動的だった。決してプロの集まりではない小さな音楽会だが、コカリナの素朴な音色と「ふるさと」の歌詞がマッチして、「音」を「楽しむ会」で「音楽会」という音楽の原点を思わせる内容だった。

 

 

会が開かれた砥部町は七折(ななおれ)梅の里で知られる。辺りは耳をすませば時節柄、梅の梢にとまるウグイスの歌声が聞こえてきそうだ。ウグイスは「春告鳥(はるつげどり)」と呼ばれる。春は巣立ちの季節。どこかウグイスの鳴き声にも似たコカリナが奏でる「ふるさと」の音色は、その昔故郷をあとにした者、この春に故郷を旅立つ者、誰もが抱く原点の「こころざし」を想起させるノスタルジーであふれていた。                            そこで1句、

どこからか鶯(うぐいす)のこえ行ってきます

(佑)