一遍と今をあるく

一遍上人堂通信

宝厳寺落慶式と一遍上人堂開眼供養

 

IMG_9664  平成28年5月14日、新築再建された宝厳寺の本堂と庫裏並びに新たに造営された一遍上人堂の落慶式法要、及び青銅で再興された一遍上人立像の開眼供養が執り行われた。本堂と庫裏、重文の一遍上人立像(木彫)の焼失から二年九か月余り。檀信徒はもとより全国からの寄付や企業と団体の浄財で、宝厳寺の再興がかなったのである。

この日は朝から、五月の爽やかな空が広がっていた。

 

 

献花IMG_9594 頭取献花1本堂を設計された古川禎一氏は、「寺社の屋根が大きいのは、それが祭住一致のためであり、軒の出が深いのは、縁を市中とみなしているからである」という伝統的な寺社建築の思想を設計の主旨とされたが、今日の建築基準法上の規制もあるので、思い通りにできないことも多々あった。とはいえ新築された本堂は、一遍上人が活躍した鎌倉時代の建築様式を基本としており、一遍上人の生誕地に建つ本堂として、各界各層から注目を集めることになる、と胸を張られた。

 

IMG_0188本堂の一番の出色は、一遍が始めた「踊念仏」の躍動感を伝える形にした銅板錣葺(しころぶき)の大屋根で、青空によく映え、圧倒的な存在感があった。

愛媛銀行の寄進で新たに造営された一遍上人堂も、石垣の上に生い茂る竹林とクヌギやカシの樹林に覆われた裏山と、その上空に広がる澄み切った青空を借景にして、荘厳で品格のある姿を見せていた。最高級の御影石をふんだんに使った敷居、県内産の檜の柱、漆喰仕上げの真っ白な外壁、整然と並ぶ化粧垂木、そして何層にも葺かれた銅板の方形屋根の頂上IMG_9904に載せられた珠径45.2㎝の宝珠が朝日に輝いていた。上人堂の高さは、地面から8m18㎝、正面の横幅は10m42㎝、床面積が33㎡(10坪)である。上人堂は清楚で気品高く、本堂の風情とよく調和し、境内に凛とした雰囲気をかもしだす風姿である。

その境内は朝早くから檀信徒、一遍会会員、道後商店街や旅館組合の皆さん、それに多数の報道関係者がつめかけて、華やかさと緊張感のある晴れ日特有の空気が周辺にみなぎっていた。

九時五十分、本堂左手の柱に下げられた喚鐘が鳴らされると、山門前に集合整列していた時宗総本山清浄光寺(遊行寺)の華やかな衣装をまとった大僧正(法主)と正僧正、僧正、権僧正、それに時宗各教区から参集した数名の僧侶、宝厳寺の総代役員、檀信徒代表者、さらに来賓の方々が境内へ入ってきた。

IMG_5764 小川さん2そして第74代遊行上人他阿真円師を中にして、境内の中心に建てられた角塔婆に対峙し、回向(酒水・四誓偈・三念仏等)が境内に朗々と響き渡る念仏の唱和とともに行われた。

次に、境内の真新しい敷石を踏みながら、上人を先頭にした一団は上人堂の方へしずしずと移動した。他阿真円上人、寄進者の愛媛銀行本田頭取、その後に檀家総代、さらに僧位順に並んだ僧正の方々が上人堂の正面に整列した。

 

 

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一遍上人堂開眼供養が始まった。本堂から地鳴りのような称名念仏が流れてくる中、上人堂正面に設けられた祭壇の前で、酒水、四誓偈、三念仏、宗祖回向、自信偈、そして最後に十念が厳かに唱和された。この開眼供養には、愛媛銀行では本田頭取以下、池田顧問、青山参与、それに部長と若手の行員を含め20数名が参列した。

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開眼供養は滞りなく終了し、十時過ぎに、二番喚鐘が打ち鳴らされた。焼香

いよいよ落慶式法要の始まりである。

木魚念仏が唱和される中、導師が入堂。須弥壇に面して置かれた朱塗りの椅子に上人が着座。長澤昌幸師(時宗宗学林学頭)の司会で、以下の会次第にのっとり法要が営まれた。

開式の辞(宝厳寺総代会長 烏谷康夫)

法要(74代遊行上人ほか本山並びに各教区代表の宗門関係者)

代表焼香は愛媛銀行頭取 本田元広氏

祝辞(遊行寺執事長)

賞詞状贈呈

IMG_5825 頭取感謝状株式会社愛媛銀行頭取 本田元広氏IMG_0023

汎座古典建築様式研究所 古川禎一氏

菅野建設株式会社社長 菅野隆次氏

 

 

檀家総代(烏谷康夫氏、島崎有三氏、蜂須賀俊一氏)IMG_5831頭取2

経過報告(宝厳寺建設委員長 島崎有三氏)

謝辞(宝厳寺住職 川崎玄倫師)

閉会の辞(宝厳寺建設副委員長 蜂須賀俊一氏)

法要終了の後、約200名の参列者は須弥壇の前で真円上人から順次、直接御賦算を頂いた。それから境内へ出ると、一遍上人堂の中に入って、一遍上人立像を拝観し、堂内の陳列ケースに展示された複製の聖絵を鑑賞した後、それぞれ散会した。

式典 法主周辺

なお、愛媛銀行に授与された賞詞状の文面は次の通りである。

「貴殿は平素三宝篤信にして今般は時宗寳厳寺の一遍上人堂新築に際し熱意を持ってその目的を達成し寺観に弥々光輝を加えられましたことは洵に奇特であります 仍ってその功績を讃え永く之を嘉賞します

平成二十八年五月十四日法主 笑顔

時宗法主大僧正 加藤円住 」