一遍と今をあるく

ギャラリー

F4号 油彩

 

食卓の透明な板ガラスの上に並んだ苺と、器に盛られた苺がピラミッド状の構図のなかに収まっている。その一つ一つが艶やかな光沢を放ち、芳醇な果肉(花託)を想像させて、観る者を誘っているかのようだ。

昔、映画「テス」を観たときの、ヒロインテスの紅い唇へ差し出された苺を思い出す。テスの美貌と薄幸、信仰と背徳。深紅のダイヤモンドと形容される苺。愛らしさだけではない別の魅力。

もっとも作者は、ただ純粋に大好きな苺の美を描いたのだが、絶妙な表現力で美が芸術へと見事に高められている。