一遍と今をあるく

えひめふるさと塾

第12回えひめふるさと塾講演「坂の上の雲ミュージアムがめざすもの」講師 徳永 佳世 先生

第12回えひめふるさと塾 講演要旨

小説『坂の上の雲』では松山出身の秋山好古、真之兄弟と正岡子規の三人の生涯を通して近代国家へと成長していく明治日本の姿を描いている。坂の上の雲ミュージアムの設立趣旨は小説『坂の上の雲』で描かれた主人公三人の足跡や明治という時代に関する展示に加え、街づくりに関する様々な活動を行い、訪れた人々が時の流れについて感じ、考える場を提供することである。この趣旨に基づきながら開館から7年間様々な活動を行ってきた。

第12回坂の上の雲ミュージアムには三つの機能がある。1つ目は「展示機能」、2つ目はまちづくりの中核施設としての「まちづくりを支援する機能」、そして最後が「フィールドミュージアムのガイダンス機能」。この三つの機能を合わせもっている複合施設が坂の上の雲ミュージアムである。

坂の上の雲ミュージアムの主な活動は、毎年企画展を開催したり、資料の収集・保存・調査・研究などである。そのような様々な活動のなかで特に力を入れているのが、小説「坂の上の雲」を人々に伝え、街の人々と一緒に展示を作り上げ、みなさんに親しんでもらうことを目的とした普及活動である。坂の上の雲ミュージアムは「訪れた人々が時の流れについて感じ、考える場となる」ことを大きな目標としているが、ミュージアムで行われている展示の内容は小・中学校の子供たちにとっては理解するのは難しい。だから、単純に資料を展示するのではなく、グラッフィックパネルや映像、音声ガイドなどを導入したり、キッズコーナーを設けて子ども用の絵本、ぬりえ等をおき、大人と子供が一緒に展示を楽しめるような努力をしている。さらに、小説「坂の上の雲」を子供たちが理解しやすいように、基礎的なことを伝えようとオリジナルの絵本を制作した。そしてこの絵本の制作の際に協力してくださったのが、松山市内の専門学校でデザインを学ぶ専門学校生である。彼女たちにイラストを描いてもらい、共同で絵本を制作した。その後も企画展にあわせてパズルやカルタなども制作していただき、専門学校生にも坂の上の雲ミュージアムを知ってもらえるいい機会となっている。

普及活動として大事にしているのが、「守る・伝える・ともに親しむ・ともに育てる」ことである。これをコンセプトに平成25年度からは愛媛のこれからを担う若者が学び、未来について考えていくことを目的とした「夏休みこども講座」、「夢を描こう☆坂の上の雲未来塾」という2つのイベントを開催した。そのなかの「夢を描こう☆坂の上の雲未来塾」というイベントでは、様々な分野で夢を実現し活躍されている先輩の方々の話を聞いて、参加した子供たちが自分の夢について考え、10年後の自分に宛てたメッセージカードを作成してもらい、それを10年後にそれぞれの方に返却するということを行っている。その子たちが10年後に坂の上の雲ミュージアムに他の知り合いの方たちも連れて再び来てくれたらいいなと思いこのイベントを開催している。

第12回2このように人々が集うということを目的としたイベントを開催している。これからも「訪れた人々が過去・現在・未来へと続く時の流れについて感じ、考える場となり、そして自分がこれからを生きていくための何かを感じとってほしい。」という想いを持って様々な活動に取り組んでいきたい。そして、坂の上の雲ミュージアムがこれからも人々の集う場所、人々に大事にされる存在になってほしいと思う。

H26.3.15(土)国際ホテル松山南館 (文責 青山 淳平)