一遍と今をあるく

ギャラリー

「オオバン」

以心伝心

ある農業用溜池に1羽のオオバンが来ていました。頻繁に潜水し水底のホテイアオイの茎とか根を食べていました。「大食漢やなぁ」などと感心しながら土手を通る毎日でした。50日目くらいだったでしょうか、私が現れると、はるか向こうから急いで泳ぎ寄ってくるようになりました。ある日のことです。法面に上がって来て、目の前で羽を伸ばして見せたのです。5、6メートルの距離、まるで「これ見てみて…」という仕草でした。その日から3回ほどやってくれました。渡って来る前、どこか北国でヒトからエサをもらっていたのだろうか、とも思いましたが、出会った頃は普通の野生の水鳥と変わらない態度でした。やはりお互いに顔見知りになったせいだろうと解釈、出かけるたび、土手から小声でいろいろ話しかけました。「よう食べるのう…」とか「また潜るのかや」「独りでは寂しかろうが…」など、勝手なセリフでお付き合いをしました。

ところが3年目に、ぱったりと会えなくなりました。いつ行ってもその池に居ないのです。しかし原因はすぐに判明。一つ隣の谷の、より大きな池に移っていたのです。しかも2羽で暮らしていました。結婚したのかそれとも友人が出来たのか、どちらなのか聞いて見なかったので分かりません。しかし私を覚えていてくれたのでしょう、二人して、いや2羽連れ立ってこちらへ泳ぎよって来ました。

文字や言葉ではなく、心を以って通じ合うお付き合いは、なんとも言いがたいものだと思います。

土手にあがると泳ぎ寄ってくるようになったオオバン
(2012年2月27日松山市にて)

 

オオバン  ツル目クイナ科オオバン属

Fulica atra  全長39cm 冬鳥(ごく一部留鳥)

十数年前までは、愛媛県下では数カ所に現れる「珍鳥」の部類だった。今では、冬季に溜池などでよく見られる。同じクイナ科の「バン」に似ているが、額から嘴にかけての「額板」がバンは赤色、オオバンは白色なので容易に識別できる。
鳥3
法面に上がって来る(2012年2月28日松山市にて)
鳥4
目の前で伸びをして見せる。
鳥5
ゆっくり帰って行く。
鳥6
いつものように水草を食べ始める。
鳥7
隣の池で。ハシボソガラスの嫌がらせに立ち向かう2羽。
(2014年1月13日)
鳥8
ジャンプして、かなりの気迫。
鳥9
バトル終わって、2羽で挨拶?に来てくれる。