一遍と今をあるく

えひめふるさと塾

第15回えひめふるさと塾講演「体験的まちづくり試論」講師 甲斐 朋香 先生

 

第15回えひめふるさと塾 講演要旨

第15回私は福岡市で生まれ育った。福岡市では毎年7月に博多祇園山笠が行われる。私が通った福岡高校は、博多祇園山笠などの祭りを行う地域に立地している。毎年7月になると校内にみこしがはいってきていた。毎年、夏の楽しみだった。このように高校時代から、まちの伝統文化に触れ合い考える機会があった。その後九州大学に進学し、行政学という科目に出会った。行政学というのは、制度、管理、政策の3つの側面で行政について考える学問である。恩師が言うには「世直し、人助けのための学問だ」ということ。九州大学の大学院生だった頃は、福岡市はドーナツ化現象でまちが元気を失っていた。その時期に「博多部研究共同体」という組織をつくり、大学とまちの人と共同で様々な研究を行った。

まちづくりにおいて重要なことは、まち全体が一体となることである。例えば、博多祇園山笠では地元の人だけでなく、地元以外の人も参加したり、地元のマスコミも上手に活用していた。また男性の視点だけでなく、女性の視点も大切にしていた。行政、マスコミ、地元の人、大学など様々な人たちが協力し一体となることが、まちづくりの成功の秘訣だということを、私は福岡での経験から学んだ。

2002年、松山城築城400周年を記念して、松山城をライトアップするというイベントを松山市は行った。当時、私は大学の「まちづくり学講座」という寄附講座に関わっていて、行政がそのようなイベントを行うなら、私たちは低予算で築城400周年を祝うため、まちに明かりを灯すイベントを行った。私が大学生の頃にも福岡で同じように、博多部の各地に光のアートをつくり、まちを歩いてもらった。回遊性を高めることによって、まちの魅力を再発見し、課題を実感してもらった。

第15回2現在、私は「道後オンセナート2014」の実行委員長をつとめている。「道後オンセナート2014」では世界的に活躍するアーティスト・デザイナーの方が関わったこともあって、観光面においては非常に良い効果があったと思う。しかし、観光面だけに重点を置くのではなく、それ以外のこともしようと思い、愛媛大学・松山大学の連携事業で「SENSE」というアートやデザインを切り口としたワークショップ・座談会などの様々な企画を実施することを行った。

アートやデザインを重視したまちづくりにおいて私が今、注目しているのが「創造都市ネットワーク」である。「創造都市ネットワーク」とは、今後は文化こそが発展のカギとなるという考え方に立ち、ユネスコが2004年に発足させた。その文化の振興・発展を支え、まちづくりに活かせる基盤が地域にあるとされれば加盟できる。加盟認定の対象とされている分野は、「文学」、「映画」、「音楽」、「工芸・民芸」、「デザイン」、「メディアアート」、「食」の7つである。現在、日本では神戸、名古屋、札幌などが「創造都市ネットワーク」加盟都市に認定されている。松山市もこの「創造都市ネットワーク」の文学部門への加盟認定を視野にいれて、俳句を活かしたまちづくりをするべきではないかと思う。世界遺産登録ほどの話題性はないものの、ユネスコのブランド力を活かして、まちのイメージを高めたり、加盟都市同士のつながりを通じたノウハウが得やすくなるといった期待ができる。

アートやデザインは観光面につながるだけでなく、固定観念を覆したり、人の価値観を変えさせてくれる力があると思う。アートやデザインについて学びの場をつくることによって、自分の固定観念や価値観についてもう一度見つめ直す機会を提供できたらいいなと思っている。そして今後松山市はアートやデザインを柱として、まちづくりを行うべきではないかと思う。

H26.9.20(土)国際ホテル松山(文責 青山 淳平)