大寒を迎え底冷えする毎日に、心身温まる温泉が恋しくなるこの季節。生粋の松山人である私にとって、うれしい知らせを耳にした。日本最古といわれる道後温泉にふさわしい新たな温泉施設が誕生するというのだ。
道後温泉地域では、この度本館耐震等工事の影響が懸念される中、えひめ国体に先駆けて平成29年9月の開業をめざし、飛鳥乃温泉(あすかのゆ)の整備が進められている。
施設のテーマは「太古の道後」で、飛鳥時代から平安時代等にさかのぼる道後温泉の歴史の奥行きを感じてもらうことを意図している。新しい湯屋は、聖徳太子の来浴や斉明天皇の行幸などの伝説が残る飛鳥時代をイメージした外観が特徴的である。
内部のコンセプトは「新たな温泉文化を発信する拠点」を掲げ、従来の癒しが目的の温泉の要素に加え、新しいデザインや伝統工芸で感性を刺激する美術館の要素を取り入れる。具体的には、愛媛県の伝統工芸等を一堂に集め、最先端のデザイナーとコラボレーションする予定。そして、「伝統工芸×デザインアート」のショーケース化により県の伝統工芸の魅力を広く知ってもらうとともに活性化を図る。
松山市では明治時代の近代和風建築の代表である本館との対比により、二つの時代の湯屋が楽しめる話題性に富む道後地域の新たな集客拠点として、国内外へのPRを行っていく計画である。開館翌年度の30年度は年間39万8千人の集客を見込んでおり、その後も35万人前後を想定している。入館料は、1階の浴室利用の600円からとなる。
えひめ国体・えひめ大会を前に、道後の新たな時代の幕開けである。明治の文豪、漱石も絶賛した道後温泉。その名に恥じぬ気鋭の温泉文化の拠点として、飛鳥乃温泉が末永く興隆することを願いつつ1句、
初東風(はつこち)に温故知新の道後かな (佑)