一遍と今をあるく

哲学カフェ一遍

ヤモリの卵

ヤモリの卵

4/5(金)から泊まりがけで広島大福山附属中高の教師Sさんが、ボランティアで書庫の蔵書入力に来てくれた。仕事が早くて200冊もEXCEL DBに入力してくれたので、DBに入力した蔵書数は合計6,300冊を超えた。    さあ、あと残りがこの何倍あるか…。

新書版用には一連12段の本棚が3連になっており、奧の窓際の書棚には読み終えた外国語の本が置いてある。普段あまり手を触れない棚だ。

本を取り出して、フロント・ページに「入力すみ」という鉛筆の書き込みがない本をまとめてSさんに渡すのが私の分担。彼が南窓側のテーブルに運び、MacBook-ProでEXCELの表に入力してくれる。本を取り出していて、ふと本の上に小さな卵の殻が乗っているのに気づいた。

卵は棚の天板と本の上縁がつくる狭い隙間に産みつけられていた。本はアーネスト・ヘミングウェイの「日はまた昇る」で、高校3年生か大学1年生の頃に読んだものだ。製本に綴じ糸が使われておらず、背表紙に糊付けしただけのものだから、用紙の劣化もあって、開くとバラバラになる。

これは何の卵か? 前に前庭の芝生のはずれで見たトカゲの卵に似ているが、書庫内にトカゲはいない。すると室内や窓ガラスの外側によく見かけるヤモリ(ニホンヤモリ)であろうと見当がついた。卵は本を傾けたらすぐ外れたので、物差しを置いて接写した。

長径が12mm程度あり、孵化はニワトリのようにくちばしで殻を突き破るのではなく、蓋を開けるようにして行われるようだ。細かい仕組みはわからない。下部には平たい、本との接着部があり、卵はここで固定されていたと思われる。

殻は軟らかいかと思ったら、鶏卵と同じように堅い。鶏卵と同様に炭酸カルシウムが卵膜に結晶として配列しているためのようだ。

「それにしてもメスのヤモリは、どうやって産卵に必要なカルシウムを補充しているのだろう?」と思った。鳥類なら陸生の貝類をついばみ、砂嚢で砕き、消化・吸収できるから、カルシウムを摂取できるが、ヤモリがそんなものを食うとは思えない。

爬虫類生態学の本を調べて見ると、産卵前のメスで、首の付け根の両側にカルシウムを貯蔵する瘤が出来ている写真があった。ちょうど哺乳類の甲状腺がヨードの貯蔵をするように、ヤモリにはカルシウムの貯蔵腺があるのかも知れない。

卵は一度に2個形成され、1回の産卵で2個の卵を生むようだ。年の産卵回数は2回なので計4個を生むことになる。こんなに少ない卵数でよく種が絶滅しないものだと思う。

いや今日はSさんのおかげで、思わぬ発見があり楽しむことができた。